登山に出かけて、ご当地ならではの名物をお土産にだけするのはもったいないと思います。日常と非日常との往復運動として登山を考えると、ご当地の名物も非日常的体験を彩る要素になります。まずそれを自分で堪能するのが、大人の特権ではないでしょうか。

お土産は各地で開発されているから創造性に目を留めたい。どこも同じようなものだろうと考えるのはもっともなことです。確かに都会の工場に製造依頼して、販売だけしている売店も見受けられます。しかし、最近はご当地で知恵を出して新たな名物を開発する動きも盛んになってきています。

名物を食べるならご当地の伝統に根ざしているものがお薦めです。ご当地の伝統なので、他の地域と共通していたりもしますが、それぞれに工夫が見られ、味わいが違っています。味わいこそが精になるそうです。

たまに山奥でおさしみ定食?に出会うことがあります。その時には謎を感じますよね。物流が全国に普及した結果、地元住民の方々には大きな恩恵をもたらしたに違いないでしょうけど、旅客の一人としては、文明の恩寵であるごちそうは避けて通りたい。

逆にどこにでも食べられると思える、そばには地方色の違いが隠されています。出汁の味わいは店舗毎に違っていても、それでもある種の傾向がありますし、何をトッピングしようか工夫しているところに地方を感じます。

お土産に多い甘味だけど、見立ての違いが楽しみです。同じようなまんじゅうでも、地元で製造している限り仕上げや甘味の強さなど工夫が随所に見られるからです。包装紙などはジャーナルに貼り付けて記念にしています。

お茶請けから酒の当てまで、なかなかの品揃えです。これらを習慣に従って家族、友達へのお土産とするだけなのは寂しい限りでしょう。地元創成の政策はさまざまな形で芽吹いているのに注目したいものです。

例えば登山の行きに買って、途中で食べるというスタイルはいかがでしょう。鞄の中に、ポケットの中に気になるお土産を詰めておいて休憩の時間などに味見してみるというのは、結構お薦めです。

予期しない待ち時間をイライラせずに過ごせます。田舎に行けば行くほど、予測できない隙間時間が生じたりしてスケジュールが狂ってしまいます。そんなときに鞄から文庫本を取り出すのも良いですが、同時に買い置いたお土産とお茶を楽しむのはなかなか素敵な時間を作ってくれます。

あるいは宿での夜中の楽しみを確保しておけば後悔しません。山の中は夜が早いです。夕方には売店が閉まってしまって、もちろんコンビニエンスストアなど見当たらなくて往生してしまった経験を何度かしました。自販機などは見つかりますが、飲み物だけでは残念すぎます。

楽しみ方に決まりはないが、マナーの基本は大切にしたいですね。旅の恥はかきすてという言い習わしはあるのですが、ゴミなどのポイ捨ては感心できません。こんな時、売店でもらった小さなポリ袋が大変役に立ちます。これもお土産を出だしで入手したおかげですね。

他人の領域、文化、習慣、環境を冒さないのが原則です。自分の自由にできるのは、他人と分離できている領域だけでしょう。例えばどこで食べるか、公園の中のベンチなら良いですが、店舗の前を無断で拝借するのはマナー違反です。

自分で未経験なお土産を家族、友達に自信を持って渡せてますか?僕にはためらいがあります。できるなら、自分が美味しいと感じたものを渡したいです。それでこそ一部であれ、体験の共有になるように思うからです。

それでもときどきがっかりするものにも出会うのが旅の味です。箱の中がカビていたなんていうのは悲しい思いをします。それは30年以上前の昔話ですが。