天気は人智の及ぶところではないと知るべしと先輩たちに伝えられてきました。外国では重要なイベントで天気を人工的に操作するという話もあるようですが、現代でも完全にコントロールできないのが天候という相手です。山の中での悪天候は町中とは異なります。

だからこそ低山でも濡れると遭難のリスクがあることを年に何度かはニュースに取り上げられます。日常的によく知っている裏山で行方不明になったり、有名な観光地で遭難したり。自然は無警戒なときに容赦なく襲いかかってきます。

対策として原則になっているのは、天気が崩れる予報なら中止、途中なら引き返すという決意です。予定を変更したり、中止するという決意がもっとも勇気を必要です。しかも相手が何でもないことのように思えるときが難しいです。

そもそも山の天気は不安定です。天気予報では雨ではないのに、現地に着いたときには土砂降り、なんて経験が何度もありました。天気予報はある程度のひろがりをもった地域に対してされますが、意外と天気は局地的に異なっています。

特に山の天気は恐ろしいと経験者は解説します。少しの天気の変化で視界がなくなります。視界が少し悪いだけで、足下の凹凸が知覚できなくなります。陰が少し薄くなるだけで、浮き石なのかを判断つかなくなるのです。

目の前は雨で遠くが見通せず、足下はどこを踏めば良いのか分かりづらくなっては、歩く速度が遅くなり、経過時間から自分の位置を知ることができなくなります。だからといって、地図とコンパスも位置の特定に役立ちません。

たとえ衣服や履き物が防水だからといって安心できないのが山中の常識です。最近の山行用具は高性能を強調して開発されており、以前のものより遙かに優れた性能を持っていますが、それでも山中の危険をすべて解決したのではありません。

軽登山用の撥水加工は防水ではありません。表面に水をはじく薬剤を塗布しているだけなので、少しの摩擦を受けただけでも、撥水能を失います。そのため、実際に雨に当たるといろいろな箇所から水が染みこんできます。

高機能衣類の代表である速乾能にも雨の中での意味はありません。乾こうにも水分を蒸散させれるほど、外の湿度が低くありません。汗を蒸散させるはずの下着は、吸収した汗を全身に分散させて全身を冷やす機能を発揮することになります。

その上、何かの拍子に転倒すると全身が濡れるのは、もはや避けられないでしょう。そして濡れると体温を奪われて筋肉がつります。両足が同時に痙ってしまうと一歩も歩けなくなります。その場にしゃがみ込んでやり過ごせば良いのでしょうか?

痙攣していなくても足が濡れると疲労は半端なくなります。ぬかるみが恐ろしさは、そのような体調低下の状態を見逃さないところです。確実にあれこれと雑多な判断ミスを誘発するでしょう。それぞれはもちろん小さなミスに違いありませんが。

最終的に山中で足が動かなくなってしまう以前に、疲れてしまって正常な判断ができなくなります。これが本当に恐ろしい状態なのです。いつもなら延期する判断ができたとしても、認識能力が著しく損なわれていますから、沢を下ったり、稜線から外れたりなんて自殺行為をしかねません。

山中では雨から逃れる道はないと考えておきます。売店や雨を避けられる場所を期待していられません。観光地開発されていたとしてもです。必要のある場所に必要なものが揃っていると思っているなら楽天的なお人好しです。

それでも万が一、山の中で天候の急変に遭遇してしまったのなら、少しでも雨を避けれる場所に身を避けて、天候が回復するまで動かないようにして待機するものだと覚えておきましょう。